2016年 09月 14日
L'Estragon エストラゴン |
約一年ぶりとは (-_-;)
「こち亀」に、四年に一度のオリンピックの年だけに目覚めて活動するというキャラクターがおりましたが、それに比べればまだ・・・なんて言う、これっぽっちのエクスキューズにもならない冒頭から始めます。
エストラゴン。
これは日本では非常に扱いが難しいハーブです。高く、弱く、個体差が激しく、街中のスーパーでごく稀に市販さているものは、同じ「エストラゴン」という括りで扱ってはいけないくらい、品質が劣る。でもこれは仕方がないことで、日本でそこそこの需要なんてあるわけがない。完全に市民権を得たバジルならまだしも。
その影響からか、レストランで使用されるプロ用のハーブとしても、ことエストラゴンに関しては、目を覆いたくなるような悲惨さ。だから使う人も少ないのではと邪推したりもするわけで。
ところが、写真の群馬県高崎で栽培して頂いているエストラゴンは、これは国内で入手できる種としては最高峰だと断言できるレベル。まさしく、フランスで初めて(因みに留学中の1996年、21歳の時)フレッシュのエストラゴンを手にした時同様に「おおっ、エストラゴン!」という感じ。
ある日、これをブーダンブランにどっさり入れ込んだ時は、お客様からの反応がすこぶる良く、「エストラゴンの香りが物凄い!」 なんて感想を、この仕事を始めて約20年で初めて耳にしました。
カボチャのブルーテにコーヒーの泡と、エストラゴン入りのブーダンブラン、サワークリームを添えた数年前のランチの前菜 ↓ 。
そしてこちらは今年の桃を使ったデセール ↓ もうじき終わりますが・・・。
エストラゴンのシロップに漬け込んだ桃、同じくエストラゴンの香りを移したリブザルト(甘口の白ワイン)、赤いフルーツとヨーグルトのムースグラッセ、ベルベーヌのソルベ、アーモンドのチュイルに詰めた白チョコレートのムース。
何でこんなに盛り込むのか?所謂『甘い味』が構成要素のほとんどを占めるデセールの世界では、単純な構成にすればするほど、短時間で口飽きしやすく、一皿を食べきるまでに大抵つまらなく、家庭で甘いもの食べている感覚に囚われやすい・・・というのが私の個人的な見解です。
さて、次はこのエストラゴンで仕立てたアイスクリームをどうしようかと呻吟しております。市場や素材からインスピレーションを得るとよく言われますが、私の場合はそういったことがまず起こらなく、今回は極めて珍しいケースなのです。
素材からインスピレーションを受ける。
自分のような料理人でも初めて口にしてもいいのかな??と思えた瞬間です。
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by latourelle
| 2016-09-14 15:30
| デザート&チーズ