2016年 11月 05日
Les Clients doivent être en silence ? 物言うお客は何とやら?? |

今までお客様に言われた一言で、最も厳しく刺さったものは、忘れもしないこの一文です。
「君ね、もうこの仕事辞めた方がいいよ!!今日の君の料理にはお金を払う価値はないね。がっかりだよ、本当に。頭にくるよ!もっと精緻にやれないのなら本当に辞めた方が君の為だよ」
で、リアクションは?? はい、平謝りです。それはその方のご指摘がほぼ正しく、反論の余地がなかったからに他なりません。そのゲストの方は、当時私がシェフを務めていたお店の最も大切な顧客の方でした。結構な頻度で来店されており、良い時は褒めてくれますが、悪いときはハッキリとダメ出しされます。それにしてもこの時ばかりはさすがに凹んだのか?と聞かれれば、申し訳ありませんが、全く凹むことはありませんでした。何故でしょうか?それで同じ過ちを繰り返さないのか?
この仕事をやるうえで最大のリスクは何か? 不確実性です。いわゆるランダム性です。除去できるものと軽減出来るもの、注意力を増すことでよりそのリスクを減らせるもの、いろいろです。
因みに、『ランダム性』、それを軽減するための手法として、「お任せ一本」というコースが誕生したといってもよいでしょう。食材のロスもそうですが、よりこちらの事情の方が切実です。人手不足の問題が今後は更に深刻化していくことは間違いありませんから、とりわけ高級店においては、この傾向に拍車がかかることは避けられません。
例えば、一皿の料理を構築する際、どれほどの人手がかかるかで、そのリスクの増大の幅はある程度測ることが出来ます。欧州の高級店で、ゲストの数と同じくらいの料理人が調理場にいることが珍しくないのはそういう事情からです。
端的に言うと、一人の人間が焼きものに集中して、一日中肉や魚や野菜を焼き続けることが出来れば、不確実性というリスクはかなり軽減できるでしょう。それも一人20人分限定という風に人数まで制限できれば。実際の超高級店ではやっているお店もあると思います。
だからNOMAの調理場には50~60人もの料理人が働いているんですね。そのほとんどが無給というのは有名な話です。かつてのエルブジ然り。
北欧モデルに憧れる料理人は多いと思いますが、例えばデンマークは数年前までネオコンバリバリ路線で、自然エネルギーには背を向けて原発ガンガンで、政治の腐敗度では先日の某調査機関のデータによると、腐敗度ランキング世界トップ5を占めるのはほぼ北欧諸国でした。日本が確か14位。どなたかご存知でしょうか?
他人の家の芝は青く見えます。
休みも多いが税金もバカ高い。社会の構造が違い過ぎるし人口も違い過ぎる。特に高級店ではそのほとんどの従業員が無給に近い(もしくは極限的な薄給)というのが事実ならば、何故そんなモデルに惚れ込むのか不思議でなりません。料理のネタは直ぐに切れます、飽きます、廃れます。皿の上の料理自体には、本当に学ぶべき価値なんてものはないのです。ここ数年、心の底からそう思います。
ある時は抜群に美味しい。またある時はイマイチ。そしてある時はショッキングな出来栄え。そういったことを超越して、先ほどのお客様はご指摘くださったので、この極めつけの天邪鬼を自負する私でさえ、謝るしかなかったということです。これも普段の信頼関係あってこそ(その時はそのお店と、前のお店GCからのもの)というのはもちろんです。
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残念ながら日本の多くの専門メディアは、無知蒙昧なままに無責任に記事を書いても責任を問えないシステムのようですので、ある事象の良い面ばかりを殊更強調し、煽りまくるという悪癖があります。最近では、ライターさんを雇うことを出版社自身ではせずに、門外漢様へのアウトソーシングで「天才料理人」が一度の特集で3人も登場したり、昨日までは全く関係のない雑誌社にいたのに、今日から料理専門誌の編集長という、椅子から転げ落ちそうになるようなバックボーンを持った出版社まで。
メディアもこのような状況で、果たしてお客様からも仮にお褒めのコトバ以外何も言われなかったとしたら、料理人はいつ日々の仕事への反省の機会を得るのか? いつ自己を鑑みる契機を得るのか?
特に料理長になった後は、本当に的を射た叱責をしてくれる人は少なくなってきます。オーナーともなればほとんどゼロ人に近いというのが実情でしょう。売り上げ以外にも、自分を客観視させてくれるヒト・モノ・コトは必要です。
「売り上げ良ければ七難隠す」商売の恐ろしい一面です。
またもや脱線気味なので、写真の料理を。
数週間前の白トリュフメニューの冷たい前菜。ペルドロー、縮緬キャベツ、フォアグラ、ジビエのコンソメをシャリュトリューズにし、白トリュフのスライスとそのバター、トーストにしたブリオッシュを添えて。
白トリュフと最も相性のいい素材の一つが、白身のジビエ。雉とペルドローは特に。全体像はこんな感じで ↓ この時期には毎年不定期で(≒気分次第で)やっております.

パテアンクルートは飽きたので。
あっ、それから初めてワインをアップします。ワインに大変お詳しいある方からアドバイス頂き、素晴らしいマリアージュとなりました。日本では甘口ワインを語る人は殆どいないので、その方のアドバイスにとても助けられました。

と、こちら ↓

いろんなブロガーさんいらっしゃいますが、デセールについては誰も語りませんよね?? 辛口だろうが甘口だろうが語り口はどうでもいいのですが、料理を語る時、同時にデセールを語らないのは、サッカーを語る時、華麗なゴールの瞬間だけを語るのと同じです。デセールを語れるブロガーさんでしたら、メルクマールとしては有用でしょう。断言できます。
本日はここまでに。
by latourelle
| 2016-11-05 02:59
| 料理